
最近、スーパーでお米の値段を見て、思わず二度見した方、いらっしゃいませんか?「また上がってる…」とため息をついたのも束の間、政府が「備蓄米」を放出する」というニュースが飛び込んできました。
「やった!これで少しは安くお米が買えるかも!」そう期待したのもつかの間、すぐに耳に飛び込んできたのが「税金の二重取りだ!」という批判の声。
「え?備蓄米って、そもそも私たち国民の税金で買ったものじゃないの?それを、また私たちがお金を払って買うなんて、まさに二重取りでは!?」
災害時のような無料放出を期待していたのに、なぜ今回は有償販売なのか。この無料放出がされないことへの違和感は、おぎやはぎの小木博明さんの発言で一気に国民の間に広がりました。
この記事では、なぜ「税金の二重取り」とまで言われるのか、その論争の核心を徹底的に掘り下げます。備蓄米制度の仕組みから、なぜ無料放出とはならないのか、その真実まで、徹底的に分かりやすく解説していきます!


『税金二重取り』批判の核心:備蓄米へのシンプルな疑問

「税金で買ったお米を、また有料で買わされるなんておかしい!」
この「二重取り」批判は、多くの国民が抱いた率直な感情です。
普段、私たちが納めている税金は、道路や公共施設、医療、教育など、様々な形で私たちの生活を支えるために使われていますよね。その中には、もしもの時に備える「備蓄米」の購入費用も含まれています。
だからこそ、「いざという時のために、みんなでお金を出し合って買った備蓄米なのに、なぜ今、また私たちが買わないといけないの?」という疑問が湧くのは、ごく自然なことです。
お笑いコンビ「おぎやはぎ」の小木博明さんがテレビ番組で、
「税金で買った米をまた僕らが買う。すごい違和感」「二重で買ってる気がする」「なんかマッチポンプみたい」
とコメントしたことは、まさにこの国民感情を代弁するもので、専門用語を一切使わず、誰もが直感的に感じる「おかしい」という気持ちをストレートに表現した彼の発言は、瞬く間にSNSで拡散され、大きな議論を巻き起こしました。
SNS上では、「政府は何を考えてるんだ」「災害時じゃなくて、今売るなんておかしい」「結局、選挙目当てのパフォーマンスなんじゃないか」といった批判の声が次々と上がり、この「税金二重取り」論争は社会全体に広がる形となったのです。
政府の見解:備蓄米は『税金二重取り』ではない理由と無料放出しない背景

国民からの「税金二重取り」批判に対し、政府側はどのように考えているのでしょうか?彼らの主張の根拠を見ていきましょう。
まず、政府が備蓄米の購入や管理に使っているお金は、「食料安定供給特別会計」という、国のお財布の中でも特別な分類に管理されています。
私たちの税金が原資であることは間違いないのですが、この特別会計は、米の安定供給に関する費用を一元的に管理するための「独立した財布」のようなものなのです。
政府の主張はこうです。
「備蓄米を売却して得たお金は、この特別会計に戻されるか、国庫に納入されます。これは、新たな利益を得るためではなく、将来の備蓄米の購入や、お米を倉庫に保管したり管理したりするための費用に充てられるものなのです。」
つまり、政府は「税金で得たお金を、さらに税金として徴収しているわけではない」と言いたいわけです。売却益は、備蓄米制度を維持するための「回転資金」として使われるのであって、政府が儲けているわけではない、という論理です。
さらに、今回の備蓄米放出が無料放出ではない理由は、米価が異常に高騰したという「経済的な緊急事態」に対応するためだからです。
東日本大震災のような物理的な災害で食料が無くなった時に無料放出するのとは、目的が違うのだ、という立場も政府にはあります。
会計の真実:備蓄米の『税金二重取り』論と評価損

「税金二重取り」論争で、少し専門的な言葉も飛び交いました。
特に話題になったのが、小泉農林水産大臣の「減価償却されている」という発言です。しかし、実は備蓄米の会計処理は、一般的な「減価償却」とは少し異なります。
大臣が使った「減価償却」という言葉は、実は少しだけ専門的には不正確で、かえって話を難しくしてしまいました。 この場合、もっとピッタリな言葉は「評価損」です。
この2つの違いを、身近な例で見てみましょう。
STEP1:「減価償却」とは? →【例:パン屋さんのオーブン】
パン屋さんが100万円のオーブンを買ったとします。このオーブンは10年間使えるとします。
この場合、会計の世界では「100万円の出費を、1年で全部経費にするのはおかしい。10年かけて使うのだから、費用も10年に分けよう」と考えます。
そこで、毎年10万円ずつ「オーブンの価値が下がった」ことにして、経費として計上します。 これが「減価償却」です。
ポイントは、オーブンを『使う』ことで、その価値が少しずつ減っていくという考え方です。
STEP2:「評価損」とは? →【例:アパレルショップのジャケット】
アパレルショップが、春に1万円のジャケットを仕入れました。これは「売るための商品(在庫)」です。
しかし、シーズンが過ぎて秋になると、このジャケットは「型落ち」になり、もう1万円では売れそうにありません。市場での価値は5000円くらいに下がってしまいました。
このとき、お店は帳簿の上で「このジャケットの価値は、仕入れた時より5000円下がりました」と記録します。
この失われた5000円の価値が「評価損」です。
ポイントは、商品を『持っている間』に、古くなったりして価値が下がってしまった、という考え方です。
STEP3:では、「備蓄米」はどっち?
もうお分かりですね。 政府の備蓄米は、パン屋さんのオーブンのように「政府が使い続ける設備」ではありません。 アパレルショップのジャケットのように「いずれ売ることを前提とした商品(在庫)」です。
だから、会計処理も「評価損」の考え方を使います。
5年前に高い値段で買ったお米も、時が経って「古米」になれば、新米と同じ価値ではありません。市場での価値は下がります。
だから政府は、帳簿の上で「このお米の価値は下がりました(=評価損が出ました)」と処理しているのです。
結論:だから「二重取りではない」という理屈になる
以上のことから、今回の備蓄米の販売は、
「税金で買ったものを、さらに利益を乗せて売っている(二重取り)」
のではなく、
「価値が下がってしまった在庫(古米)を、その時点での適正な市場価格で売却した」
というのが、政府側の会計上の説明になるわけです。
「買った値段」ではなく「今の価値」を基準に価格を決めている、ということですね。
国民の期待:なぜ備蓄米は災害時のように『無料放出』されないのか?
国民の間に強く根付いているのが、「備蓄米は、災害などの『有事の際』には無料放出されるものだ」という期待です。実際に、東日本大震災のような大規模災害時には、備蓄米が無償で提供された実績があります。
だからこそ、今回の米価高騰という「有事」に際して、それが無料放出ではなく有償販売であったことに、多くの人が違和感を覚えたのです。
政府は、今回の価格高騰を「経済的な有事」と位置づけ、地震などの「物理的な有事」とは区別しています。
しかし、国民にとってはどちらも「困った時」であり、「税金で備えていたものが助けにならないの?」と感じてしまうのも無理はありません。
備蓄米の『税金二重取り』論争と『無料放出』の今後
今回の備蓄米「税金二重取り」論争は、単に経済政策の是非を問うだけでなく、政府の財産管理、情報公開、そして国民とのコミュニケーションのあり方という、より深い問題を浮き彫りにしました。
「税金で買ったものを、また買うなんて」という国民の素朴な不満は、専門的な説明だけでは、なかなか解消されませんでした。政府の説明が、国民の直感的な感覚や「有事の備えは無料放出」という期待に十分に届かなかった、と言わざるを得ません。
この論争から私たちが学ぶべき教訓は、将来の政策運営において非常に重要です。
備蓄米問題の解決に向けた3つの提案 |
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1 目的の明確化 備蓄米がどのような場合に、どのように使われるのか(有償か無料放出かなど)、国民が納得できる明確な基準が必要です。 |
2 運営の透明性 備蓄米の購入費用、保管コスト、そして売却して得たお金の使い道など、税金の使途に関する徹底した情報公開が求められます。 |
3 効果的なコミュニケーション 政策の複雑さを理解し、国民感情の機微を察し、平易かつ誠実な言葉で対話を重ねることが不可欠です。 |
備蓄米の『税金二重取り』問題をどう考えるか
今回の論争は、私たちに一つの問いを投げかけています。「私たちは、政府の発表を鵜呑みにせず、かといって感情的な批判に流されることなく、物事の本質をどう見抜けば良いのか」ということです。賢い消費者、そして主権者として、私たちはこの備蓄米の税金二重取り問題にどう向き合うべきでしょうか。
冷静な判断のための3つのステップ |
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① 多角的な情報に触れる SNSで目にする「分かりやすい」批判だけでなく、少し手間をかけて政府の公式発表や、異なる立場の専門家の意見にも目を通してみましょう。 |
② 「なぜ?」を考えてみる 「二重取りだ!」と感じた時、その直感を大切にしつつも、「なぜ政府は有償で売るのだろう?」「なぜ無料放出にしないのだろう?」と一歩踏み込んで考えてみることが、冷静な判断に繋がります。 |
③ 関心を持ち、声を上げる この問題に関心を持ったなら、その気持ちを忘れないことが最も重要です。選挙の際に各政党の食料政策を比較検討するなど、私たち一人ひとりのアクションが、より良い未来の制度を作る力になります。 |
おわりに:備蓄米と税金、そして無料放出問題から学ぶこと
たかがお米、されどお米。今回の備蓄米を巡る一連の騒動は、単なる価格問題ではなく、私たちの税金がどのように使われ、いざという時に国民のためにどう機能するのかという、国の仕組みの根幹に関わる問題でした。
「税金の二重取り」というキャッチーな言葉は、多くの国民の関心を引きつけ、備蓄米制度や無料放出の是非について、多くの国民が知るきっかけとなりました。
私たちの食卓は、国の政策と密接に繋がっています。スーパーで米の価格を見るたびに、今回の論争を少しでも思い出してみてください。
そして、私たちの生活に直結する「食料安全保障」という重要なテーマについて、これからも関心を持ち続けていくこと。それこそが、今回の備蓄米が私たちに教えてくれた、最も大切なことなのではないでしょうか。


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