『スピノザの診療室』の感想 希望と祈りが灯る感動の物語 

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今回紹介するのは『スピノザの診療室』。

医療が題材である小説であり、本屋大賞ノミネート作品。面白いにきまっている!僕はこの本を目にした瞬間にAudibleで聴き始めました。 

読み終わった感想はというと、 

現役の医師として20年の経験を積んでいる著者だからこそ書ける、単なるドラマチックな医療ストーリーではなく、深く心に響く命や死、そして人間の幸せに迫る感動作でした。 

読むことで、今の時代だからこそ大切にしたい心の豊かさに気づかされ、温かい気持ちになれる一冊です。 

ただ、気になるのが『スピノザ』とは?ということ。 

そこでこの記事では、『スピノザの診療室』の感想と『スピノザ』とは何かについて解説していきます。 

雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。

三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。

 
哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。 

引用:amazonより 

スピノザとは17世紀のオランダの哲学者のことです。

このスピノザの考え方は、世界のすべてが神さまの一部で、自分の気持ちをよく考えること。それが自由や幸せにつながる。

だから物事をよく考えて、周りの自然や人を大事にすることが、みんなにとっていいことだと教えてくれています。 

1. 神さまって何? 

神さまとは空の上にいる特別な存在じゃなくて、この世界そのもの。

たとえば、自然や木、動物、空気、そして私たち人間も、全部が神さまの一部なんだと考えました。だから、自然や周りの人たちを大切にすることが、とても大事なんです。 

学校の理科で学習する生態系の仕組みを考えるとわかりやすいかな。 

2. 自由ってどういうこと? 

私たちはいつも自分の気持ちや欲しいものに引っ張られてしまうけど、本当の自由とは、頭を使って自分の気持ちをコントロールすることだと言っています。

たとえば、何か嫌なことがあった時にすぐ怒っちゃうのではなく、「どうして自分は怒っているんだろう?」と考えて、その気持ちを落ち着けることができたら、それが自由に近づいているということです。 

3. 幸せって何? 

スピノザの言う幸せは、たくさんのものを持ったり、みんなから褒められることじゃなくて、自然や世界の仕組みをちゃんと理解すること

たとえば、どうして友達とけんかしちゃったんだろうとか、どうして植物は太陽の光が好きなんだろうとか、そんなことをしっかり考えて分かると、心が落ち着いて、幸せになれるということなんです。 

4. 全部がつながっている 

スピノザは、世界に起こることは全部が原因と結果でつながっていると考えました。

たとえば、雨が降るから草が育つし、草が育つから動物が食べられる。そして動物が生きているから、私たちも食べ物を手に入れることができる。

すべてのことが繋がっているから、何かが起こる理由を知ることが大事なんだと教えてくれています。 

『スピノザの診療室』の主人公、雄町哲郎の行動や考え方には、スピノザの哲学がどのように関係しているのでしょうか。僕はこのように感じました。 

1. 自然の一部として考える命と死 

まずスピノザの言う「神=自然」という考え方が、哲郎の医師としての姿勢に表れていると思います。

哲郎は大学病院での華々しいキャリアを捨て、京都の地域病院で日々の診療を大切にしていて、命や死を自然の一部として受け入れ、目の前にいる患者一人ひとりに寄り添う姿勢に見て取れます。 

2. 理性による感情のコントロール 

哲郎は医師として感情に流されず、冷静に理性的に行動しようとしています。

大切な人を失い、辛い過去を抱えている中、自分の感情に振り回されることなく、医師としての責任を全うしようとする姿勢は、スピノザの考える理性的な生き方に近いのではないでしょうか。

哲郎が冷静に患者や同僚と向き合う中で、感情に任せず理性的に判断する姿勢が印象的です。 

3. 人間の幸福と希望 

この本では、哲郎が自身の人生や医療現場での経験を通じて、《人の幸せとは何か》というテーマに向き合っています。

特に、最愛の妹を失った後に甥の龍之介と暮らし、彼との関係を通じて希望を見出していく過程は、スピノザが説いた「自然と一体となり理性をもって生きること」が幸福の鍵だという考えに合致しているよに感じます。 

感動のポイント1:静かな医療の現場で生まれる心の交流 

「スピノザの診療室」の一つの魅力は、「これぞ医療ドラマだ!」という華やかな手術やドラマチックな治療シーンではなく、静かな医療の現場で繰り広げられる、患者と医師との心の交流です。

物語の中で、哲郎は患者一人ひとりと向き合い、時に無力感を抱きながらも、その人が持つ「生きる力」に寄り添っています。特に終末期医療の場面では、患者が直面する「死」との向き合い方、そして医師としての哲郎の葛藤が、リアルかつ温かく描かれています。

このような場面は、僕自身の「生」と「死」に対する考えを深めるきっかけとなり、深い感動を呼び起こされました。 

感動のポイント2:人間としての幸せを問いかけるテーマ 

この本のもう一つの重要なテーマは、「幸せとは何か」という問いだと思います。

今の社会では、成功や地位、富が幸せの象徴として語られることが多いと思います。しかし「スピノザの診療室」では、それとは異なる人にとって本質的な幸せの形が描かれます。

哲郎自身も一度は大学病院で将来を期待されたエリート医師として成功の道を歩んでいましたが、妹の死と甥との生活を通じて、医療や人生の本質的な価値を見つめ直していきます。

哲郎が患者と向き合う姿勢や、甥との絆を通して、「本当に大切なものは何か」を考えさせられるはずです。

この問いかけが、この物語の中核を成し、心に深く響く要素となっていると感じます。 

感動のポイント3:温かなメッセージと普遍的な希望 

「スピノザの診療室」は、著者が自身の医療経験を基に描いただけあってリアルな物語です。しかし、ただ現実の医療とはこういうことだということを表現するのではなく、希望に満ちたメッセージが全体に流れています。

医療の現場では、ドラマチックな奇跡が起こることは稀であり、時には無力感に苛まれることも。それでも人々は日々を生き抜いていく。その中で、医師としての誇りや患者への優しさ、そしてどんな時でも希望を忘れない姿勢が、物語を通じて丁寧に描かれています。

読了後には、困難なこの時代にこそ必要な「心の豊かさ」に気づかされ、温かい気持ちになることができました。 

「スピノザの診療室」は、華々しい奇跡や劇的な事件が描かれるわけではありませんが、その静かな語り口と深いメッセージが、僕のの心にしみじみと、そしてしっかりと長く残りました。

医療の最前線で活躍する主人公の哲郎と、その患者たちとの交流を通じて、「命とは何か」「幸せとは何か」といった普遍的なテーマに触れることができるのです。

特に、終末期医療に関心のある人や、家族や友人と「死」に向き合うことを経験したことのある人、自分の「人生」、そして「死」についてが頭の中にある人にとってこの作品は心の支えとなり得るでしょう。 

「スピノザの診療室」は、現代の困難な時代に生ている中で、僕たちが忘れかけている「心の豊かさ」に気づかせてくれる作品です。

奇跡ではなく、静かに寄り添う勇気や優しさ、そして普遍的な希望が、この物語の中には詰まっています。

読み終えた後には、今の自分の生き方を見つめ直し、新たな希望の灯火が心にともることでしょう。 

Audible作品は本の内容はもちろんですが、ナレーションが作品の良し悪しに大きな影響を与えます。 

淡々とした語り口調でありながら、しっかりと場面の状況や登場人物の心情を表現していて、この本にピッタリなナレーションだと感じました。 

Audibleのメリットはいつでもどこでも本が聴けるということですが、この本は静かな場所でゆっくりと本の情景を感じながら聴きたい。 

目を閉じて、じっくりと、自分の望む人生の幸せってなんだろう?なんて考えたりしながら聴けたら最高に心が満たされる時間になると思います。

もちろん神の書籍での読書は良いものですが、聴く読書もいつもと全然違う楽しさ、作品の新しい味わいを感じられます。ぜひ一度体験してみて下さい。 

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